河口の鳥の観察に熱中する失業中のカメラマンは、飛翔する鳥たちが、すでに自然の習性を失いつつあることに気づく。方向感覚が狂い、季節はずれに渡来する鳥たち。油でよごれた港辺に漂う鳥の死骸。荒廃する河口でおこる鳥たちの異変に、現代の不安と焦燥を的確に描く表題作はじめ、全5編収録の初期短編集。
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一滴の夏
野呂邦暢